弟子誕生おめでとう!!その3~ミッドワイフ VS 産科医
こんにちは。
NZでVBAC!
何度も言ってごめんなさい。
でも…
NZでVBAC!
しました。
さて、午後3時にミッドワイフの内診により破水したわたし。
破水後すぐに始まった陣痛。
10分間隔になり、5分間隔になり、
12時間後の午前3時には2~3分間隔に。
友達のミドさんに親方を任せ、病院に出発。
病院に到着したときには子宮口が6~7センチ開いていました。
順調に見えた陣痛の進み具合。
病院に到着してからも、ここが頑張り時!と
とにかく座らず、重力の力を借りてスクワットを繰り返すこと4時間半。
突如病室のドアがガラガラと開いた。
入ってきたのはアラビア系の中年の男性。
時刻は午前8時半。
疲れでぼやーっとしていた意識の中で、ピンクのワイシャツが印象的だった。
なにやらミッドワイフと深刻な顔で話をしている。
アラビア系の中年の男性は、この日担当の産科医だった。
「ちょっと内診してもらいますね。」
ミッドワイフが言う。
ベッドに横になり、足を開く。
容赦なく襲ってくる陣痛の痛み。
内診を終え、ミッドワイフとアラビア系産科医がまた話している。
というかちょっと言い争ってる!?
「なになに…ケンカ…?どうしたんだ…。」
そんなことを考えていたら
アラビア系の産科医が、わたしとダンナにも英語で説明をしはじめた。
ところどころ聞き取れる部分もあったが
とにかく陣痛が辛く、正直英語に集中できない。
説明を終えたアラビア系産科医は
「でぃど ゆー あんだすた~んど??」
これみよがしにゆっくりとわたしに問うてくる。
「あ、あ、あい あんだすとぅーど…」
本当は理解していないが、とりあえず返答。
「understand」を過去形の「understood」で返せた自分を褒めてあげたい。
どうやら、子宮口は6~7センチのままでそこから開いていないため、子宮破裂のリスクもあるし、早めに帝王切開に切り替えよう、とのことだった。
「そんな必要ありません。」
ミッドワイフが
アラビア系産科医が日本語をわからないことを知っていてか、はっきりとわたしに向かって言った。
「ベビーの心拍も全く問題ありません。ハッピーです。がんばれるなら、このまま自然分娩のままで絶対大丈夫です。」
まっすぐな瞳ではっきりと言うミッドワイフ。
わたしはあまりハッピーじゃないけど…。
「わ、わかりました。わたしもここまで頑張ったので、下から産みたいです。」
意思を伝え、アラビア系産科医に説明。
少し納得していないような様子のアラビア系産科医。
2時間後に全く子宮口の開きが進んでいなかったら、帝王切開に切り替えると言い、病室を出て行った。
リスクを考え、切りたいアラビア系産科医。
母体とベビーの力を信じ、切りたくないミッドワイフ。
まさに
『ミッドワイフ VS アラビア系産科医 in NZ』
しょ、勝敗の行方はわたしにかかっているのか…?!
「さぁ、がんばりましょう!」
ミッドワイフが言う。
水分不足により点滴を入れる。
なんとか2時間後までに赤ちゃんに下りてきてもらわなくては。
その思いで、そこから2時間。
再び始まる地獄の陣痛エクササイズ!
とにかく歩く。
陣痛が来たらとにかくスクワット。
立つのに疲れたら、四つん這いで開け!子宮口!
辛すぎて、意識していなくてもあふれ出てくる涙。
情けない…と思いながらも止められない。
わたしはなぜここにいるのだろう…。
「お~い…はやく出てきておくれよ…。」
おなかのなかの弟子を思うたび泣けてくる。
そんななか、ずっとそばにいてくれたダンナ。
ちなみに写真も撮り放題。
たくさん記録も残し、日本にいるわたしのハハやダンナハハにも経過を報告してくれていました。
本当に本当に、ほんと~に…
ダンナが一緒にいてくれなかったら、不安で辛くて、すぐに帝王切開に切り替えていたと思う!
そして2時間後…。
破水してから約20時間後の午前11時。
再びアラビア系産科医がやってきた!
そしてドキドキの内診…。
内診を終えたアラビア系産科医。
表情は暗い。
「あ…全然進んでいないんだ…。」
雰囲気ですぐにわかった。
そこからアラビア系産科医が説明してくれた。
子宮口の開きはやはり7センチくらいからまったく進んでいなく、とにかくリスクが高くなるから帝王切開に切り替えるのがベター、というのが産科医の意見だった。
「え…もう…辛すぎるし、切って弟子に会えるなら、それでいいかな…。」
20時間耐えてきて、結局、帝王切開というのは
確かにくやしい、というより悲しいが
もう、正直、何に申し訳ないかわからないけど、体力的にきつかった。
いつになったら終わるの?という辛い気持ちのほうが
下から自然分娩で産みたいという気持ちを上回ってしまいそうだった。
「て、帝王切開でもいいかな…。」
と、小さな声でダンナに相談しようとしたとき
「考える時間をください。」
と、再びミッドワイフがぴしゃりと産科医に伝えた。
「ベビーの心拍はハッピーです。考える時間をください。」
つ、強いよ…。
強いよミッドワイフ!(涙)
お医者さんにまったくひるまない。
ピンと伸ばした背筋。
ミッドワイフだってずっと寝ていない。
ずっとわたしのそばにいて、腰をさすってくれた。
なんだか本当に、ミッドワイフがかっこよく見えた。
たしかにここまで頑張ったのにお腹を切るのはイヤだなぁ。
この思いが再び芽生えはじめた。
一度出ていく産科医。
そしてミッドワイフと作戦会議。
「一度、エピを入れて痛みを和らげて、リラックスしながら体力を回復させて良い陣痛がくるのを待ちましょうか。」
ミッドワイフが言う。
エピとは「硬膜外麻酔」のことで、ニュージーでは「epidural anesthesia」からエピと呼ぶようだ。
日本でいう「無痛分娩」の際に使う麻酔のようだが
そもそもニュージーでは「無痛分娩」という概念は無いようで
下から産む、いわゆる経腟分娩の過程で
痛みを和らげるために麻酔を使うという「手段」の一つであるとのこと。
「痛みが和らぎますし、寝れますよ!!」
ね、寝れる…
横になれる!
スクワットを繰り返したわたしの足腰、体力、気力はすでに限界で、「横になって休める」という魔法の言葉が頭を反芻する。
「はい…麻酔打って、もう少し頑張りたいです。切りたくないです。」
そこからミッドワイフの対応は素早く
アラビア系産科医を呼んできてわたしの意思を説明。
エピを打って、リラックスさせて良い陣痛を待つことになった。
「また2時間後見に来ます。それでもだめなら切りましょう。」
再び2時間のタイムリミットを告げ、アラビア系産科医は半ばあきらめたような顔で病室を出て行った。
「異変があったら絶対に見落としません。大丈夫です。絶対に下から産めます。」
心強い言葉をくれたミッドワイフ。
同時に、万が一何かあったときのためにすぐに帝王切開へ切り替えられるよう
あれよあれよという間におまたの毛を剃られ
手術に必要な個人情報を記入し
尿管を入れてたまっていたおしっこを取られた。
そして麻酔医を待つことに…。
さぁ!麻酔を打って開くのか!?わたしの子宮口よ!
ハッピーかい?お腹の弟子よ!
まだまだつづく~。